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Debian GNU/Linux 2.2 のインストール (Alpha)
章 4 ハードディスクのパーティション分割


4.1 背景

ディスクのパーティション分割とは、単にディスクをいくつかの区画に分割する ことです。それぞれの区画は、互いに独立しており、大まかに言えば、 家を壁で仕切るようなものです。 ある部屋に家具を置いても、他の部屋には影響がないのと同じです。

もし、すでに何らかの OS (Windows95、Windows NT、OS/2、MacOS、Solaris、 FreeBSD、…) がインストールされているディスクに Linux を インストールするなら、おそらくディスクのパーティションを切り直す 必要があるでしょう。 一般的に、すでにファイルシステムが形成されているパーティションに変更を 加えることは、そこに保持された情報をいくらか破壊することを意味します。 そのため、パーティションを切り直す前には、 必ずバックアップをとっておくべきです。先ほどの家の例を持ち出せば、 壁を移動したりするときには、ふつうはあらかじめ家具を邪魔にならない ところに移動しておくでしょう。 さもなければ家具を壊してしまいかねません。

GNU/Linux には、それ自身のために最低限一つのパーティションが必要です。 オペレーティングシステム全体、つまりアプリケーションや個人的なファイルを 一つのパーティションに収めることができます。また、常に正しいとは限りませんが、 たいていのユーザはスワップパーティションも必要だと考えます。 「スワップ」とは、オペレーティングシステムが用いるメモリの一時退避用空間 です。これは、システムが安価なディスク記憶装置を「仮想記憶」として用いる ことを可能にするものです。 スワップを独立したパーティションに割り当てることは、その利用をより 効果的なものにします。 (Linux に普通のファイルをスワップとして利用させることも可能ではありますが、 お勧めできません。)

しかし、多くの人々は最低限必要な数よりも多くのパーティションを GNU/Linux に割り当てます。 ファイルシステムをいくつかのより小さなパーティションに分割する理由には二つ あります。一つめは安全性です。もし、偶然に何かがファイルシステムを破壊した としても、 一般的にその影響を被るのは一つのパーティションだけです。そのため、システム の一部を (注意深く保持しておいたバックアップと) 取り換えるだけですみます。 最低限、いわゆるルートパーティションを作ることは考慮すべきです。ここには システムの最も基本的な構成部分が収められ、もし他のパーティションに破損が 生じたとしても、システムを補修するために Linux をブートすることができます。 このことは、システムをゼロから再インストールしなければならないような トラブルを防ぎます。

二つめの理由は、コンピュータの利用方法にかなり依存する問題ではありますが、 一般的に商利用の際により重要になってくるものです。 何かが管理の外でディスクスペースを消費し始めたと仮定します。もしその プロセスがルート特権を得るようなことが起きれば (システムは一般ユーザが 使用できないディスク領域をある程度確保しています)、 ディスクスペースがなくなっていることに突然気づかされるでしょう。 OS は、さまざま作業のために (スワップスペースのほかに) 実ファイルを利用する必要があるので、このことは不具合を引き起こします。 さらに、このことは、ローカルシステムに由来する問題でないこともありえます。 例えば、電子メールとしてスパムメールを取り込むことは、パーティションを容易 に溢れさせえます。より多くのパーティションを用いることは、このような問題の 多くからシステムを保護するのです。 もう一度電子メールの例を取り上げるならば、/var/spool/mail に独自のパーティションを割り当てれば、スパムメールを取り込んでも、 システムの大半はその動作に支障はないでしょう。

より多くのパーティションを利用する際に、唯一実際に障害となるのは、 あらかじめどのようなパーティションが必要となるかを予測することが、 多くの場合難しいことです。 もしあまりに小さなパーティションを用意したなら、 システムを再インストールしたり、 容量の足りないパーティションにスペースを空けるために、 しょっちゅうファイルを移動したりしなければならないでしょう。 一方、あまりに大きなパーティションを用意すれば、 他で利用できるスペースを浪費しかねません。 近頃はディスクも安価になったとはいえ、お金を無駄に使う必要はないでしょう?


4.1.1 ディレクトリツリー

以下の一覧は、重要なディレクトリについて説明したものです。 こちらは、どのようにパーティションを分割するかについての参考となるでしょう。 こちらの内容が難しいと感じられた方は、 とりあえずこの部分は飛ばして、 インストールマニュアルの残りの部分を読んでから、 読みなおしてもよいでしょう。


4.2 システムの利用計画

どのような種類のマシンを構築するのか決めることは重要です。 このことから、必要なディスク容量は決定されるでしょうし、 パーティション分割の方針も影響を受けるでしょう

This has changed for Potato -- we need to update it. Debian では、利用者の便宜に合わせて共通タスクアプリケーション What does this need to be called? がいくつか用意されています。(プロフィールの選択とインストール, Section 7.19 をご覧ください。) 共通タスクアプリケーションとは、 パッケージの選択がより簡単になるように用意された、 パッケージ選択の単なるセットです。 これはいくつかのパッケージに、 インストールされるよう自動的にマークを付けてくれます。

用意された共通タスクアプリケーションは、それぞれインストール完了時の システムサイズが異なります。 これらの共通タスクアプリケーションをお使いにならないとしても、 システム設計にこちらの論議は重要です。 なぜならこれは、パーティションのサイズや、 必要になるパーティションの数を決定する際のヒントを与えてくれるからです。

以下は、ご利用いただける共通タスクアプリケーションのいくつかと そのサイズをまとめたものです。 The various applications and sizes should probably go here.

Server_std 標準的なサーバ
小規模なサーバ向けのプロフィールです。 シェルユーザ用のソフトウェアを持たない スリムなサーバに有用です。 こちらは基本的に FTP サーバ、ウェブサーバ、DNS、NIS、POP を装備しています。 必要となるディスク容量は約 50MB です。 もちろん、このサイズはインストールされるソフトウェアのものだけで、 ご利用になるデータのためにさらにディスクが必要です。

Dialup ダイアルアップマシン
X Window System、グラフィックやサウンドに関するアプリケーション、 エディタなどを装備した標準的なディスクトップマシン向けのプロフィールです。 こちらのパッケージのサイズは約 500MB です。

Work_std 標準的なワークステーション
X Window System や、X のアプリケーションを装備しない ユーザマシン向けの最もスリムなプロフィールです。 おそらくラップトップやモバイルコンピュータに適切でしょう。 こちらのサイズは約 140MB です。 (なおこの文書の著者は、X11 も含めてこれよりも少ない約 100MB で済む、シンプルで優れたラップトップ向けの設定も知っています。)

Devel_comp 開発環境
Perl や、C、C++ などのすべての開発パッケージを備えた デスクトップマシン用の設定です。そのサイズは約 475MB です。 ただ、X11 や 他の用途に用いる付加的なパッケージをいくつか追加するならば、 この種のマシンでは約 800MB 近いディスクが必要になることを 見越しておくべきでしょう。

心に留めておいていただきたいのですが、こちらのサイズには、 通常よく使われるユーザファイルや電子メイル、データなどの他のファイルが、 まったく含まれていません。 ご自身のファイルやデータのスペースは、大きめに見積もることが常に肝要です。 特に、 Debian の /var パーティションには、 たくさんのシステム情報が収められます。 dpkg ファイル (インストール済みパッケージの情報など) はゆうに 20MB は消費します。 またログファイルやその他のファイルのために、 通常少なくとも /var パーティションに 50MB は空けておいてください。


4.3 Linux におけるデバイス名

Linux におけるディスクおよびパーティションの命名法は、他のオペレーティング システムとは異なっています。パーティションを作成したりマウントする際には、 Linux がどのようなディスク名を用いるのか知っておく必要があります。 以下は基本的な命名法の仕組みです。

各ディスクのパーティションは、ディスク名に十進数を付け加えることで 表します。例えば、``sda1'' と ``sda2'' はそれぞれ、システムにある 第 1 SCSI ディスクドライブの第 1、 第 2 パーティションを表します。

実際にありそうな例をあげてみましょう。 二つの SCSI ディスクを持つシステムで、一方の SCSI アドレスが 2、もう一方の SCSI アドレスが 4 だとします。 最初のディスク (アドレス 2) は ``sda''、 二つ目のディスクは ``sdb'' と名付けられます。 もし ``sda'' ドライブに 3 つのパーティションがあるなら、 それらは ``sda1''、``sda2''、``sda3'' と名付けられます。 ``sdb'' ディスクとそのパーティションにも同じことが当てはまります。

もし二つの SCSI ホストバスアダプタ (コントローラ) がある場合、 ドライブの順序が混乱するかもしれないことに注意してください。 ドライブのモデルを知っていると仮定するなら、 このケースでの最もよい解決策はブートメッセージを見ることです。


4.4 パーティション分割の推奨案

すでに述べたとおり、独立した小さなルートパーティションは必ず作るべきです。 また、スペースがあるならば大きな /usr パーティションを作るべきです。 例をあげるなら、大抵のユーザは最初のうちはパーティションを二つ用意すれば 十分でしょう。パーティションをたくさん用意することはディスクスペースを 浪費するので、小さなディスクを一つしか持っていない場合には、 特にこうするのが適切です。

もし、Debian のディストリビューションに含まれていないプログラムをたくさんイン ストールしようと考えているならば、/usr/local パーティションを 必要とする場合もあるでしょう。 また、メイルサーバとして利用するならば、 /var/spool/mail に 別のパーティションを必要とするかもしれません。 /tmp に 20 から 32MB ほど、独自のパーティションを割り当てるこ とは、多くの場合よい考えです。 たくさんのユーザアカウントをかかえるサーバを設置するなら、独立した大き な /home パーティションを用意することも概してよいことです。 このように、パーティション割り振りの条件は、一般的に利用法の違いからコン ピュータによってさまざまです。

とても複雑なシステムのためには、 マルチディスク HOWTO をご覧になるとよいでしょう。 こちらには、ISP の管理者やサーバを設置する方の関心事の多くが、 詳細な情報として含まれています。

スワップスペースの問題に関しては、さまざまな見方があります。大雑把ながらも よいやりかたは、搭載しているシステムメモリーと同じ容量のスワップを用意する ことです。ただ、64MB 以上のスワップは大抵のユーザにとってはおそらく意味が ないでしょう。またたいていの場合、スワップを 16MB より小さくするのも避ける べきでしょう。 もちろん、これらのルールにも例外はあります。例えば 256MB ほどの RAM を積んだマシンで、10,000 もの方程式を同時に解こうとするならば、1GB (もしくはそれ以上) ものスワップを必要とするでしょう。

32-bit のアーキテクチャ (i386 や、m68k、32-bit SPARC、PowerPC) におけるスワップパーティションの最大サイズは 2GB です。 (Alpha と SPARC64 では実質的に無限と言えるほど大きなサイズを使えます。) これはほとんどの場合において充分な大きさであるはずです。 しかし、もしこれ以上の大きさのスワップ領域が必要なら、 異なるディスクにスワップ領域を分散したり (この手法は「スピンドル」とも呼ばれています)、 また、可能ならば SCSI あるいは IDE の異なる チャンネルにスワップ領域を分散するよう試みるべきでしょう。 このようにすると、カーネルは複数のスワップ領域をバランス良く使おうと するので性能が向上します。


4.5 パーティション分割の一例

一例として、32MB の RAM と /dev/hda に 1.7GB IDE ハードディスクを搭載した著者の一人のホームマシンの例をあげましょう。 /dev/hda1 には 500MB の DOS パーティションがあります。 (それほど使うわけではないので 200MB 程度にするべきでした。) /dev/hda3 を 32MB のスワップパーティションとして使用し、 のこり (約 1.2GB の /dev/hda2) を、 Linux パーティションにしています。


4.6 インストール前のパーティション分割

パーティションの分割は、Debian をインストールする前と、インストールの最中 の二度にわたって行うことができます。 お手持ちのコンピュータを Debian 専用機にする場合には、 インストール作業 (``ハードディスクのパーティションを切る'', Section 7.5) の間にパーティションを作成すべきでしょう。 一方、複数のオペレーティングシステムを持つマシンをお持ちの場合は、 一般的には各オペレーティングシステムで、 それ専用のパーティションを作成すべきです。

以下の節では、インストールに先だって行うネーティブ オペレーティングシステム上でのパーティション分割に関する情報を扱います。 なお、他のオペレーティングシステムが参照するパーティション名と Linux が付けるパーティション名がどのように対応するのは確認しておくべきでしょう。 Linux におけるデバイス名, Section 4.3 をご覧ください。


4.6.1 Tru64 UNIX 上からパーティションを分割する

以前は Digital UNIX、そしてその前は OSF/1 として知られていた Tru64 UNIX は、 BSD の「ディスクラベル」と同様な方法でパーティションを構成します。これは ひとつのディスクドライブに対して八個までのパーティションを持つことが 可能です。各パーティションは Linux 上では `1' から `8' までの番号で識別され、 UNIX 上では `a' から `h' までの「文字」で識別されます。 バージョン 2.2 以降の Linux カーネルではパーティション `1' は常に パーティション `a' に対応し、`2' が `b' に、以下同様にそれぞれ 対応しています。例えば Tru64 UNIX 上の rz0e は ほとんどの場合 Linux 上の sda5 に対応しています。

ディスクラベル中のパーティションは互いに重なっている場合が あります。さらにいえば、パーティション `c' はディスク全体を表現する と決められています。 (これはつまりすべての中身のあるパーティションと 重なっているということです。) Linux 上では、これは sda3sda と等しい (また、もし二台目の SCSI ディスクが ある場合には sdb3sdb と等しく、以降も 同様である) ということを意味します。 ただし、この条件を満たすための場合を除けば、互いに重なるパーティション を作成することにはメリットはありません。

もうひとつの伝統的な決まりは、パーティション `a' が、ディスクの最初から始まり、 したがって常にディスクラベルと起動ブロックを含むということです。

ディスクのパーティション分割はアプリケーションマネージャから起動する グラフィック操作によるディスク構成ツール、またはコマンドラインから disklabel ユーティリティを起動することによって実行できます。 Linux ファイルシステム用のパーティションタイプは `resrvd8' に設定します。 これは disklabel 経由でのみ実行可能ですが、これ以外の すべての操作はグラフィック操作によるツールで簡単に実行できます。

スワップパーティションを UNIX と Linux で共有することは可能であり、 もちろん意味のあることです。この場合、UNIX がスワップ領域のしるし を壊してしまうので、UNIX から Linux に切り替えてリブートするたびに そのパーティションについて mkswap を実行する必要が あります。このため、swapon -a でスワップ領域の使用を 開始する前に、Linux のスタートアップスクリプトを使って mkswap を実行しておくと良いでしょう。

UNIX のパーティションを Linux からマウントする場合は、Digital UNIX が 二種類の異なるファイルシステム、UFS と AdvFS を利用できることに 注意してください。Linux は前者しか認識できません。


4.6.2 Windows NT 上からパーティションを分割する

Windows NT は PC スタイルのパーティションテーブルを使用します。 既存の FAT または NTFS のパーティションを操作する場合には、 Windows NT のネイティブなツールを使うことをお勧めします。 (あるいは、もっと便利な方法として、AlphaBIOS 設定メニューを 使ってディスクのパーティションを再構成することもできます。) これ以外の場合には、Windows からパーティションを分割する必要は 実際のところありません。Linux のパーティション分割ツールを 使ったほうが、一般的にはより役に立ちます。注意しなければいけない ことに、NT を起動した際、ディスクアドミニストレータが Windows 以外の ディスクを見つけると、それに対して「無害なしるし」を書くことを 提案してきますが、絶対にそんなことをさせてはいけません。 この「しるし」はパーティション情報を破壊してしまいます。

Linux を ARC/AlphaBIOS/ARCSBIOS コンソールから起動するつもりなら、 MILO を入れておくための (小さな) FAT パーティションが必要になります。 このパーティションは 1MB もあれば充分です。Windows NT が インストールされている場合は、その 6MB の起動パーティションを この目的のために使うことが可能です。


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Debian GNU/Linux 2.2 のインストール (Alpha)
version 2.2.20, 25 November, 2000
Bruce Perens
Sven Rudolph
Igor Grobman
James Treacy
Adam Di Carlo